彼女はいつだって春を生きていた。
夏だろうと冬だろうと関係なく、彼女のいるところには花が咲いていて、彼女が進む先には柔らかな風が吹いていて、そして彼女の周りはいつでも、明るい光で満ち溢れていた。
もちろんそれは現実でない、あくまで比喩の話だ──だって、日本には四季があるんだから!──が、やはり世の中にはそうとしか表現できないような人間が存在する。
常に陽の当たる場所を歩いていて、一生振り返っても何も恥じることのないような人間。ああ自分とは生まれた時点で全てを違えていたのだと、そして私はその全ての選択肢を間違えて生まれてきたのだと、そう得心せざるをえないような──だってそうでもしなければ私が苦しいだけだ。
なぜこの人はこんなにも全てを持ち合わせているのか、私と違って、それは富の問題でも容姿や能力の問題でもなく、ただただ、その生を神様に祝福されながら生きてきたような、それを以て全てが完成してしまったかのような、それだけで他のものは一切要らないとでもいうような、そんな人間。
彼女――幸原あかりはそういう人で、そして少なくとも人生のある時期において、私の一番の友達だった。